しろばんば

Wikipedia
ユーモア欠落症患者のために、ウィキペディア専門家気取りたちが「しろばんば」の項目を執筆しています。

しろばんばとは井上靖による日本小説で、少年の視点を通して素朴なアニミズムから人間の内面を見通す哲学的な思考に至る経緯を描いている。

概要編集

『しろばんば』は大正時代を舞台とし、主人公洪作少年が伊豆湯ヶ島で過ごす日々が中心となっている。その地では「しろばんば」と呼ばれる怪異の伝承が残っており、夕闇が降りる頃になると大人たちは子供に「暗くなるとしろばんばが出るから、その前にへ帰りなさい」と教えていた。しかし洪作少年は曾祖父のだったおぬい婆さんと二人だけで暮らしており、帰りが遅くなっても何か言われる事はなかった[1]。それでも友達が次々と家路に着いて一人になると、どこか寂しさを感じており、洪作はそれが しろばんばのせいだ、と思っていた。しろばんばは寂しさや侘しさを連れてくる怪異だ、と幼心に解釈していたのである。これはアニミズムの根本に通じるもので、古代から人間は人知の及ばないもの理解できないものに「名前」や「人格」を与えることで理屈をつけようとしてきた。例えば古代アステカやマヤでは太陽を天に君臨するとして扱い、その機嫌を取って気候を安定させて貰う為定期的に生け贄を捧げていたし、日本でも「すべてのモノには神が宿る」として八百万の神々を思い描いた。

しかし少しずつ洪作が成長し、世の中が僅かずつ見えてくると、いつしかしろばんばの事を考えることは無くなっていく。それまで普通だと思っていた日々が、「本家の跡取り」である自分を手元におくことで部落内の立場を守ろうとする[2]おぬい婆さんの保身に寄るものであると知ってしまったり、勉強も運動も出来る優秀な子供と思っていた自分が平凡な人間だと気付いてしまったり、自身の人生を生きるなかで朧気な怪異の存在を気にかける余裕は無くなっていくのである。中世を終えると世界的に宗教が衰退していくが、これは洪作と同じく「生きることが忙しくなった」というのが大きい。神も怪異も空想であり、生きるのに不必要だと考えられるようになったのである。目に見える事以外を気にかけられなくなるというのが幸福なのか不幸なのか、それは個人の価値観だが社会的に現実感の徹底が進んでいったのが近代思想観と言える。

そして洪作は、人の死を知る。最初に曾祖母のたねが亡くなったときには、特に何も感じず大人たちの言う通りに葬式に出ただけだったが、さき子が突然亡くなった後には彼女の事を思い返すたび心に冷たい風が吹くのを感じるようになり、そしておぬい婆さんの死に際しては悲しみと共に「やっと解放された」という安堵の気持ちも芽生え、そしてそれ以上に強い寂しさを覚えるのである。一人になって湯ヶ島を去る事になった洪作は、ですれ違ったみすぼらしい楽団の曲を「侘しい」と感じた。その侘しさはしろばんばのせいではなく、しかし単なる空想でもなく、自分の心が自ら産み出した侘しさなのだと洪作が気付く所で物語は終わる。目に見えない世界は確かに存在する、それは己の内側にあるもうひとつの世界。それこそが哲学的思考の根本であり、洪作少年はそこへと辿り着いたのだ。

少年の成長編集

哲学的思考へ至る成長以外にも、この作品では様々な成長が描かれている。なかでも大きいのが、に関する成長である。最初の頃は男女一緒に素っ裸で河へ飛び込んだり共同浴場へ飛び込んだりしているが、洪作はそれを特段気にすることがない[3]。しかし少しすると「男女」についての考えが芽生え、さき子が中川基と親しくしているのを見て何か不快な気分になったり彼女が妊娠したと聞いて「中川基はさき子を奪っていく略奪者ではないか」と考え始める。それからの洪作は女子と一緒にいるのを恥じるようになり、少しずつ性への認識を深めていく事となる。

また社会性への成長も同じく大きい。湯ヶ島の小さな部落だけが世界の全てだった洪作は、物心ついて始めて訪ねた[4]豊橋の様子に驚愕する。それからも度々湯ヶ島の外の場所に触れては、自分が如何に田舎者かを思い知りコンプレックスを抱いてしまう。しかし洪作はそれに押し潰されることなく、またさき子が生前言っていたように勉強に励むことで自身を奮い立たせることが出来ていた。少年は社会を知って、その大きさに潰されそうになりながらもがいて大人になるのである。

脚注編集

  1. ^ おぬい婆さんは高齢で家事の手際が良くない為、むしろ夕飯の支度が終わるまで外で遊んでいてくれた方が都合よかった。
  2. ^ そもそもが本家当主の妾という立場にあった彼女は、彼の死後自身の身の置き場を失って村人から白眼視されていた。家内のゴタゴタで一時的に幼い洪作を預かる事になったのを機に、洪作を「人質」にしたのである。
  3. ^ 女学校を出た年上のお姉さんであるさき子の裸体に、どこか眩しいものを感じたりする程度。
  4. ^ 父が勤める十五師団がある為両親はここに住んでいるが、「本家」は湯ヶ島にある為跡取りとなる洪作は当初この本家に預けられていた。

関連項目編集


  この項目「しろばんば」は、歴史に関連した書きかけ項目から歴史に残る記事進化しなければならない。
歴史は今作られている!君の名をこの記事(の履歴)に刻むのだ。 (Portal:スタブ)