兵站
兵站(へいたん)とは、「おべんとう・おきがえ」である。これを理解するのは大変難しい。しかしこの2つのどちらか一つでもウッカリ忘れてしまったら、運動会にも遠足にも行くことができない。
概要編集
兵站を理解するにはまず、戦闘・戦術・戦略を理解していなくてはならない。なぜかと言うと、兵站とは「戦闘・戦術・戦略を上手いこと成功させるための準備」だからである。このため兵站の形は時代や戦況に応じてその都度変わり、「これこそが兵站です!」と明快に説明することができない。もし「兵站とはこれこれこういうものである」とか言う奴がいたら、それは間違い無く無知か嘘吐きか詐欺師である。
兵站に唯一絶対不可欠な共通の要素があるとすれば、それがつまり「おべんとう・おきがえ」なのである。なお、ここで言うおべんとうは動力源を示す広義のおべんとうであり、お弁当以外にも燃料・電源等を含む。また、おきがえも同様に消耗品を意味する広義のおきがえである、物資全般や設備維持等に渡る幅広い概念である。ほらそれが証拠に諺にも落語にもあるではないか、「衣食足りて礼節を知る」(孔子)と。「長生きの秘訣だって?そりゃぁおめぇ食う寝ることに住むところよ、だいたい早死にする奴ぁこのどれかが欠けてるんだ、名前に予めこいつを入れておきゃぁ寿命の心配はあるめぇ」(寿限無)と。
「こんなバカな説明があるか」と思った賢明なる諸君、兵站を甘く見てはいけない。旧日本軍は兵站を軽視した(というか貧乏だったのでおべんとうとおきがえを送り届けてあげられなかったのだ)ために空腹のまま虱・水虫・しもやけ・凍傷をひっさげて敵と戦わなければならなかったのである。たとえ弾薬不足でも刀で夜襲をするなど、工夫を重ねれば戦いはできる。だが空腹は絶対に耐えられない。仮に空腹に耐えられるヤツがいるとすれば、そいつは生物ではない。
というわけで以下では戦闘・戦術・戦略について説明する。これを成功へと導くために必要な準備は何であるか、あなた自身の境遇に対し、あなた自身の頭で考えてほしい。あなたの頭で「兵站とは何か?」と考えることこそ、兵站の第一歩なのである。その道は決して平坦では無いだろうが、諸君の健闘を祈る。
戦闘編集
戦闘とは、目の前の敵をぶん殴ることである。このとき殴る部位、殴る方法、そういった細かいことを気にする暇は無い。とにかくもう滅茶苦茶に全力で突撃するしかない。基本的に体重があって背が高い方が有利と言われているが、それはまあ気休めみたいなもんである。人数がいっぱいいると文句無しに強い。
ここであなたが必要な兵站は「人望・人脈・普段の筋トレ・戦った後のおやつ・着替え」であろう。
戦術編集
戦術とは、目の前に敵がいたらこうやってぶん殴ってやろう、という妄想である。うまくいったらとても嬉しい。ここに挙げる戦術は、戦術の中でもごく一部の、特に有名なものばかりである。これ以外の戦術も世の中にはゴマンと有るのだ。あなたはその一つ一つに合わせて兵站を適切に整えなければならない。
攻撃的戦術編集
- 「とにかくたくさん殴りゃ勝てるだろ」 : 人海戦術・物量作戦・飽和攻撃
- 「左ジャブ3発のあと右ストレート1発」 : 波状攻撃
- 「パンチ力よりもフットワーク重視」 : 機動戦・電撃戦 [1]
- 「長い棒で叩けば圧倒的有利」 : アウトレンジ戦法 [2]
- 「逆に相手にうんと接近して密着状態でぶん殴ろう」 : 浸透戦術
- 「棒より泥団子投げる方が強い」 : 航空戦術・ミサイル攻撃
- 「相手の目かキンタマを狙えば一発で勝てるな」 : 集中攻撃・一点突破
- 「何か相手がビックリするような殴り方は……」 : 奇襲
- 「おじゃましまーす」 : 上陸作戦
- 「(外で仲間が武器持って待っているから)油断しているときを狙えば勝てる」 : コマンドー攻撃
- 「勝ったらトドメに蹴っとばす」 : 追撃
防御的戦術編集
- 「おい待て、持久走で勝負すべき」 : 持久戦
- 「ヘルメット持ってこう」 : 塹壕戦・核シェルター [3]
- 「危なくなるたびに知ってる人の家に逃げこんでちょっと休憩しよう」 : 縦深防御
- 「ダメ!入っちゃだめ!こっち来んな!」 : 水際作戦
- 「落とし穴だ」 : 地雷原・機雷水域
- 「うちの庭で戦えば有利」 : 雪中戦・山岳戦など
- 「先に一発殴ってすぐ逃げよ」 : (ゲリラ戦の一種の)一撃離脱戦法 [4]
- 「最後の一発は絶対においらが殴る」 : 消耗戦
ちょっと卑怯だけど、もしも成功したら「頭いいネ!智将だネ!」と言われる戦術編集
- 「相手の帰り道で待ち伏せしてぶん殴る」 : 伏兵
- 「後ろからぶん殴ってやろう」 : 背面攻撃
- 「おいらがおとりになって、飼い犬に相手のお尻を噛みつかせる」 : 挟撃・金床戦術
- 「そっくりさんを連れていって、どっちが本物かわからなくさせる」 : 陽動・欺瞞
- 「危なくなったら本格的に負ける前に、『勝負はまた明日だ』言って逃げよ」 : 撤退
- 「ある程度戦ったら逃げるフリして、追ってきたところを転ばす」 : 欺瞞撤退
- 「寝首を掻く」 : 夜襲
- 「コレよコレ!もうコレしかない!どう?コレ!」 : トンデモ兵器
仮に勝っても後々問題になりやすい戦術編集
- 「肥溜め桶をそぉい!!」 : 核攻撃
- 「ゴキジェットかけてやる」 : 毒ガス戦
- 「ゴキブリとナメクジを叩き付ける」 : 生物兵器
- 「変装して攻撃」 : 便衣兵
- 「まずは負けたフリして……」 : レジスタンス
- 「まずは仲間のフリして……」 : 裏切り
- 「オレは強い方の見方だ、文句あるか」 : 寝返り
- 「お前の妹のパンツ脱がすぞ!いいのか!」 : テロ攻撃
絶望的な戦術編集
- 「(もう仲間も武器も無いから)油断しているときを狙えば勝てる」 : ゲリラ戦 [5]
- 「棒での叩き合いじゃ勝てないから棒を捨てて殴りかかってやる!」 : 白兵戦 [6]
- 「殴られてもいい、諸共に舞台から落っこちてやる!」 : 自爆攻撃
- 「私の恋人をあんな女に取られるくらいなら、いっそ彼をこの手で……」 : 焦土作戦
無手勝流編集
- 「あいつは今何をしているかな」 : 情報戦
- 「あいつってエッチな本が好きなんだってさ!」 : 情報操作
- 「暴力はいけないと思いまーす!」 : 世論誘導
- 「先生に言ってやろー!」 : 心理戦
- 「ちょっと誰か助けて!」 : 義勇軍
- 「砂かけて目潰し」 : 電子戦
- 「イタズラ電話」 :インターネット戦
- 「おべんとうに消しゴムのカス入れてやれ」 : 通商破壊・兵糧攻め
後付けの分類として編集
後に戦術は、何も考えずガムシャラに突撃した各国当時の、行動分類にも適用されることとなった。以下の大まかな分類を見てみると、なんとなく各国の様子がイメージできるのではないだろうか。「ゲリラ」の頻度が多いのは、これが非常に安価・簡単・有効であることを意味する。あなたも困った時にはゲリラ戦、どうですか。
- イギリス「とにかくもう滅茶苦茶に全力で突撃するしかない」
- フィンランド「とにかくもう滅茶苦茶に全力で突撃するしかない」
- ドイツ「とにかくもう滅茶苦茶に全力で突撃するしかない」
- 通商破壊・電撃戦
- 中国「とにかくもう滅茶苦茶に全力で突撃するしかない」
- 人海戦術・便衣兵・山岳ゲリラ
- イタリア「突撃……どうにも性に合わないのよね」
- フランス「まあ……ちょいちょい突撃しとくか」
- レジスタンス・市街戦ゲリラ
- アメリカ「とにかくもう滅茶苦茶に全力で突撃するしかない」
- 物量作戦・上陸作戦・核攻撃
- 日本「とにかくもう滅茶苦茶に全力で突撃するしかない」
- ロシア「とにかくもう滅茶苦茶に全力で突撃するしかない」
- 人海戦術・雪中戦
- インド「とにかくもう滅茶苦茶に全力で突撃されるがまま」
- 非暴力不服従・世論誘導
- ベトナム「とにかくもう滅茶苦茶に全力で突撃するしかない」
- キューバ「とにかくもう滅茶苦茶に全力で突撃しちゃうかもね~」
- 心理戦・核攻撃
- オウム真理軍「とにかくもう滅茶苦茶に全力で突撃するしかない」
- 毒ガス戦・義勇軍・自爆テロ
- アフガニスタン「とにかくもう滅茶苦茶に全力で突撃するしかない」
- 山岳ゲリラ・義勇軍
- イラク「とにかくもう滅茶苦茶に全力で突撃するしかない」
- 砂漠戦・市街戦・レジスタンス
戦略編集
戦略とは、自分の目標である。戦闘・戦術は敵がいること前提で物事を考えていたが、この戦略においては敵がいなくてもどんどん妄想をたくましくして良いのだ。「生存戦術」とは言わないのに「生存戦略」と言うのも、一重にこのためである。
上記の「戦術」では相手をぶん殴ることを考えていたが、それはなぜだろうか。それはもちろん、勝ちたいからである。さて、ここで一つ考えてみよう。 勝つのにぶん殴るのが有効なのか?本当はもっといい手段があるのかもしれない。そもそも勝つのには何が必要だろう。どんな条件が満たされたとき勝ちと言えるのであろう。
- 「相手が泣いたら勝ち」
- あなたは甘くて強めのお酒を持って今夜、あなたの敵といっしょに「50回目のファーストキス」を見るべきだ。確実に必勝イチコロである。
- 「彼の財産を狙っている」
- あなたはなにも屈強なイケメンを打破する必要は無いのだ。週に2回以上彼の家を訪問して、ときどききまぐれにキッスでもしてやればいい。敵の家に持っていくお土産にはハイカロリーのドーナツが一番である。3年後にはあなたが想像もしていなかった勝利を手にしているだろう。
- 「奴はオレたちの仕事を奪った!」
このように冷静になって自分の目的を考え直してみると、意外なほど「ぶん殴る」のがバカバカしくなるような冴えたやり方が見つかるものである。 さあ、今やあなたの兵站は筋トレではない。ビデオ屋に行って、一番カロリーの高いドーナツを買って、履歴書を書くのだ。それを今日中にやるのだ。今日中に全ての兵站を整えられれば、あなたの前にはまばゆく輝く勝利への道が……。
兵站部隊の一例と、その成立の歴史的経緯編集
ここまでは、兵站についての抽象的な概念と、その周辺の様々な具体例を表してきた。聡明なる諸君の脳裏にも、兵站というものの姿がうすぼんやりと想像できたであろう。 だが、まだハッキリと納得がいかない部分も多いかと思う。それは、兵站の具体例を一切取り上げていなかったからだ。
そこで、ここからは実際に活動を続けている兵站部隊の例を挙げてみることにする。だが、注意していただきたい。これはあくまで一例である。 彼らの兵站部隊はその前線部隊のために最適化されている。彼らの猿真似をしていては、あなたの兵站の参考にはならない。
それでは、この兵站部隊がどれほど前線部隊の役に立っているか、その重要性に注目してみようではないか。
右のとおりである。つまり、そういうことである。
彼らが直接戦闘に加わることは滅多に無い。
仕事といったら輸送・補給・生産・給食・照明・消毒・前線への通信の確保とアドバイス・非戦闘員の救護。
やっていることはパン屋と同じである。だが彼ら抜きに戦闘が継続できるだろうか?[7]
ちなみにこの兵站部隊の創設者は陸軍野戦重砲兵部隊出身。情報戦に秀でたバリバリの軍曹である。
彼の専門は非戦闘地域における暗合解読と、敵国民へのプロパガンダ(宣伝工作)。まさに兵站。だが、彼の軍隊は食料がまるで足りていなかった。
祖国を遠く離れた兵站の貧弱な軍隊の中で、彼は空腹に苦しみながら「ぼくの考えた最強の兵站部隊」を夢見ていた。
- ……それは高度な通信能力を持っていなければならない、決っして救援要請を聞き逃さないために。
- 本部に大工場を備え、製造・出荷を日夜続けられる生産力が絶対条件。
- そこから新鮮な食料・物資を大量に、どこへでも輸送する能力を有する。
- 遠距離に渡る不整地走破能力、あるいは飛行能力が必要。
- 食品を扱うことのできる清潔さを常に維持すること。同時に怪我人の救援も可能であること。
情報戦のプロとして兵站の一端を担う彼が求めたもの、それはより本質的な兵站部隊だった。これを恥ずかしい黒歴史であると誰が馬鹿にできようか。
それこそは愚直なまでに本来の兵站の姿であり、そして同時に自軍に全く欠けているものであったのだ。いや、欠けているだけでは無かった。
その軍隊では旧来の慣習に従って、戦功を上げることにのみ目が眩んでいた。 銃剣と軍刀を手に、トランペットと軍旗を抱えて、魚雷に乗って敵艦へと華々しく付っこみ、飛行機と見れば増槽を爆弾に付け替えて、いざ行け体当たりの肉弾三勇士だったのだ。 それ故、戦地において生存を目的とした兵站を冷遇さえしていた。
「輜重輸卒が兵隊ならば 蝶々トンボも鳥のうち 焼いた魚が泳ぎだし 絵に描くダルマにゃ手足出て 電信柱に花が咲く」
これは当時彼の所属する軍隊で、兵站部隊を揶揄する歌であった。このような詩が公然と唄われ、もう兵站といったら軍人の恥、左遷先、無能の集まり、屑、馬鹿、うんこ、ニート、犯罪者、非国民、一刻も早く死んだ方がお国のため、何のために産まれて何をして喜ぶ、わからないまま終わる、とまあ、こんな扱いであったのだ。[8]
そもそもこの戦争の目的が、一つは石油確保のためであった。悪意ある言い方をしてしまえば、資源小国が資源を得るため痩せっ腹を抱えて戦っていたのだ。(いちおう、「人種差別打破」とか「植民地の解放」とかいろいろ別の理由もあったんだけど)。
そのため、上に記した「夢の兵站部隊」の高い要求を完全に満たすことは当時困難であり[9]、部隊創設よりも早く敗戦を迎えてしまった。
しかし軍曹を待っていたのは戦後の平和ではなかった。戦中と変わらぬ空腹、地獄の様な飢えが、軍から離れた彼をなお苦しめた。 彼は発狂寸前にまで追い込まれた。
やがて栄養失調で意識が朦朧とする中、彼の耳にはあの忌しい囃し唄の幻聴が響く。しかしそこにかつてあった悪意は無く、かえってこのような愛に満ちた詩であった。
「輜重輸卒が兵隊ならば ジャムもバターも人のうち 焼いたパンが空を飛び 絵に描くパンにゃ手足出て 心に勇気の花が咲く」
意識が戻ったとき彼は、あの夢の兵站部隊を一言で表すことができることに気付いた。
「食べ物が向こうからやってきてくれればいい」
この発想が現在どのような形で実現したかは、英明なる読者諸君の手前今さら言うまでもあるまい。巧みな宣伝技術を持つ彼の手腕、言わずもがなであろう。目を閉じれば聞こえてくるあの歌詞、あのメロディー。こうして兵站部隊の重要性は全国民の知るところとなった。
やがてこの兵站部隊が人質の奪還作戦を契機として、今や泣く子も黙る戦闘部隊を擁する大兵站連合となったのであるが、それはまた別のお話。
唯一惜しむらくはこの輝ける兵站部隊の名前に兵站の「へ」の字も入っていなかったことであろうか。しかしこれすらも、戦後80年にわたって防衛力整備の本質的な議論すら容易には行えなかった我が国に対するための、プロパガンダ(洗脳戦)の一環であったのかもしれない。なぜならば、産まれた赤子が初めて口にする言葉がこの部隊名であったということが多々あるのだから──。
注編集
- ^ ただしフットワークの上手いヤツはだいたいにおいてパンチの熟練者である
- ^ ただし棒の扱いに長けていてしかも目が良くないと全く無意味である。意外に上級者向けなのだ
- ^ これは後に泥団子(航空戦術)の発達・高性能化により流行らなくなる
- ^ ふつうは一撃離脱戦法といったら、飛行機で落っこちる戦法を指す
- ^ ただし相手が油断していないときは大変残念なことになる
- ^ ただし棒どうしで勝てない時点でお察し下さい
- ^ これと全く同じことを、後にアニメ監督 : 富野由悠季が、その代表作「∀ガンダム」内で描いている。 そこではもはやガンダムは戦闘兵器のみならず、家畜輸送や洗濯機や物干しに大活躍している。大変にかっこ悪い。しかし本当の正義とはそんなもんである。
- ^ 友軍(祖国の軍隊)があってもそこに戦友はいなかった。本当に、自分の部隊以外には全く友がいなかったのである。というより、友軍はむしろ敵ですらあった。だが兵站部隊の任務は、その敵を助けることなのだ。嘘でも喩えでもなく、本当に愛と勇気だけが戦友なのであった。
- ^ 一応これを満たすことを目的にした、そして個としては実現していた施設もあったが